特別養護老人ホームと一言でいっても、実は種類があることをご存知でしょうか?
ただでさえ、老人ホームは特養やら有料老人ホームやら養護老人ホームやら色々な種類があるのに、さらに特養の中にも種類があるなんて言われたら、もう何が何だか分からなくなってしまいますよね。
中でもよく話題になるのが、普通の特別養護老人ホームと、地域密着型特別養護老人ホームの違いに関する疑問です。
そこで今回は、この特別養護老人ホームの種類について詳しく説明していきたいと思います。
特別養護老人ホームの種類
特別養護老人ホームには、全部で3種類があります。
そのどれもが地域福祉を支える“地域包括ケアシステム”の根幹となる役割を担っています。
地域包括ケアシステムとは、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最期まで続けることができるよう、市町村が地域の特性を活かして独自につくりあげる、生活支援やサービス提供の仕組みのことを指しています。
現在、介護福祉業界での大きなテーマが「2025年問題」です。
団塊の世代である方が2025年には大量に要介護状態となることが予測されており、それに対して介護職員の不足や社会保障関連費用の膨大な増加により介護業界全体が不安視されているという問題です。
この2025年問題を乗り切るため、高齢者の暮らしを中心として住まい・医療・介護予防・生活支援を一体的に提供できる仕組み作りが始まっています。
このような情勢の中で、特別養護老人ホームは地域に根ざした施設として、介護依存度の高い方や低所得な高齢者にとっての最後の砦としての役割を果たしていく必要があります。
さらには、特養のもつ介護に関する知識や経験を最大限地域に還元し、相談拠点としての役割も期待されています。
そこで設置されたのが、下記に説明する地域密着型特養や地域サポート型特養なのです。
地域密着型特養
地域密着型特養とは、正式名称を地域密着型介護老人福祉施設といいます。
介護保険サービスの中でも、地域住民に対するサービスに特化し、少ない人数で顔なじみの関係性のもと、地域と共に暮らすという点に重点を置いている地域密着型サービスに分類されている老人ホームです。
定員が29名以下であり、より地域の情勢にあった指導管理を行うことができるよう、市町村が指定管理をすることになっています。
通常の特養と比べて、定員が29名以下に限定されているという点や、所在地のある市町村に居住している方しか入居できないという点が特徴です。
小規模多機能型居宅介護(泊まり・通い・訪問の各サービスを総合的に提供するサービス)やデイサービス、ショートステイなどを併設している事業所が多いです。
地域サポート型特養
地域サポート型特養とは、あまり耳馴染みのない方も多いかと思います。
在宅介護を行っている地域住民を対象に、24時間365日体制の中で見守り等を行う事業所で、都道府県が指定をしています。
見守りとは、例えば日中に生活援助員が対象となる登録者のお宅を巡回訪問し、夜間は看護師が常にオンコール体制をとり、相談及び緊急対応ができるようにしていることを指しています。
見守りだけでなく、地域で在宅介護している方の悩み相談なども受け付けます。
地域包括支援センターに似たような機能とも言えますね。
ただし、施設によって対象地区が決まっているため、事前の確認が必要です。
まさに地域包括ケアシステムの中心となるべき施設ですが、実際に行っているところは非常に少ないという現状があります。
広域型特養
地域密着型特養に対し、定員30名以上の特別養護老人ホームは広域型特養として分類されています。入居希望者の住所がどこであっても、申し込める特徴があります。
要するに、“地域密着型”や“地域サポート型”と名乗っていない特別養護老人ホームは基本的にはこの広域型特養に分類されているのです。
地域密着型特養について
それでは、テーマにもある地域密着型特養について詳しく説明していきます。
地域密着型特養は、2006年の介護保険制度改正によって新しく設置された施設です。
入所定員は29人以下と定められており、原則として施設がある市町村で暮らす方だけが入居することができます。
サービス内容は、通常の特養と変わらず、生活全般における介護やリハビリ、健康管理などのサービスを受けることができます。
通称「ミニ特養」とも呼ばれます。
メリット&デメリット
地域密着型特養のメリットは、入居者にとって住み慣れた地域での生活を続けることができるという点です。
原則として住民票のある市町村にある施設であるため、家族や友人にとっても気軽に面会に行くことができます。
また、地域との交流も活発に行われており、開かれた施設として様々な行事も行われます。
通常の広域型特養と比較した際のデメリットとしては、定員が29名以下と少ないこと、所在する地域住民しか入居できないという点から、さらに入居難易度が高くなるという点が挙げられるでしょう。
入所要件
入所要件は、要介護認定を受けている方で施設が所在する市町村に住民票がある方が対象となります。
また、原則として要介護3~5の方のみが対象ですが、特例的に要介護1,2の方でも入居申し込みできる場合があります。その条件は下記の通りです。
認知症で日常生活に支障を来すような症状等が頻繁に見られること。
知的障害・精神障害等を伴い、日常生活に支障を来すような症状が頻繁にみられること。
家族等による深刻な虐待が疑われるなどにより、心身の安全・安心の確保が困難な状態であること。
単身世帯、同居家族が高齢または病弱等により、家族などの支援が期待できず、地域での介護サービス等の供給が不十分であること。
これらの特例条件も、通常の特養(広域型特養)と同様です。
利用に関わる費用
利用に係る費用としては、施設サービス費として部屋タイプ別に下記の料金がかかります。
自己負担割合1割の場合の1日あたりの費用です。
また、これ以外に居住費や食費、日常生活上必要な物品を購入するための費用、レクリエーション代等がかかります。
これらの料金は施設によって異なるので、必ず確認するようにしましょう。
人員配置
通常の広域型特養と同様の人員配置基準になっています。
概要は下記の通りです。
まとめ
このように、特別養護老人ホームには大きく分けて3種類があります。通常の特養は「広域型特養」として位置づけられており、それに対して定員が29名以下で所在地に住民票を持つ方のみが入居できるのが地域密着型特養です。
人員配置や提供されるサービス等に大差はなく、違いがあるのはその入居要件や定員といったところになります。
それに対し、地域サポート型特養とは、地域包括ケアシステム構築のために重要な位置づけを担っている施設ですが、まだまだ数や知名度が少ないのが現状です。
また、特別養護老人ホームは総じて入居難易度が高く、入居待ち期間も半年以上~数年単位になっています。
特別養護老人ホームに限らず、介護保険制度には利用者やその家族等のニーズに応じた様々なサービスがあります。
介護に困っている方は、まずは最寄りの地域包括支援センターや担当のケアマネジャーさんに相談しましょう。
今は要介護者や、介護する家族等が孤立して苦労を抱え込まないよう、様々な取り組みがなされています。
勇気をもってSOSを発信することが、最も大切なことなのかもしれませんね。