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特別養護老人ホーム入所中でも外出・外泊はできる?その方法は?

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特別養護老人ホーム入所中でも外出・外泊はできる?その方法は?

特別養護老人ホームに入居すれば、生活上必要な介護を全面的に受けることが可能となります。

でも、たまには自宅に一時帰宅したいと思うことはないでしょうか?

たまには家族と一緒に外出して息抜きを…と考えることもあるでしょう。

実際、このような対応は可能なのでしょうか?また、施設の行事で外出するということもあるかと思います。

その時にはどのような費用がかかるのでしょうか。

今回は、そんな入居者の外出・外泊に関するサービス内容や料金について説明していきます。

特別養護老人ホームの外出・外泊について

特別養護老人ホームの外出・外泊について

そもそも、特別養護老人ホームの入居者が行う外出や外泊にはどのようなパターンが考えられるのでしょうか?

まずは施設行事として実施される場合。

少人数のグループで施設職員が同行し、日帰りで外出するレクリエーション行事が実施される場合があります。

ただし、施設行事として外泊するケースは少ないでしょう。

もう一つのケースとしてあるのは、本人及び家族等の希望により、個人的に外出・外泊する場合です。

入所中の外出・外泊はできるのか

  • 施設行事として実施される外出・外泊の場合
  • 予定される外出内容を勘案し、それに耐える体調や認知機能であると施設職員が判断した入所者に対し実施されます。

    この場合は施設側で行事に参加する職員を選定する場合が殆どです。

    本人や家族が当該行事への参加を希望していたとしても、例えば寝たきり状態である場合や外食する際に安全に経口摂取が可能な食形態(きざみ食・ミキサー食等)に加工することができないと判断される場合、常時痰吸引を必要とする場合等は施設側の判断で行事参加者から外れてしまう場合も少なくありません。

    入所者の生命の安全を優先するためやむを得ないと言えるでしょう。

  • 本人や家族の希望により個人的に実施される外出・外泊の場合
  • 基本的には本人家族の意志ですので、実施が可能です。

    ただし、本人の心身状態や認知機能によっては本人・家族・施設の3者間で話し合いを実施し、安全に実施できないと判断される場合があります。

    例えば経管栄養や痰吸引、インスリン注射などの医療的ケアが常時必要な場合や持病により急変の可能性がある場合は嘱託医に意見を求める場合があります。

    看取り期に入っている場合は、外出先での死亡も考えられるため、それを本人家族が理解したうえで呼吸停止時の対応が問題なく可能であればそのまま外出・外泊できることが多いです。

    体調に問題なければ、日帰りの外出や1~2泊程度の外泊であれば気軽にOKを出す施設が殆どです。

    しかし、1週間以上などの長期に渡る場合は施設の介護報酬の大幅な減収となるため、遠回しに短縮を求められたり外泊自体に難色を示してくる場合もあるでしょう。

    もしくは外泊中のベッドを利用し併設するショートステイの利用者を受け入れることについて、同意を求めてくることもあります。

外出する際の手続き

まずは施設の職員に外出予定を事前に申し出ましょう。

「今から行きます」という突然の申し出は施設側の対応が間に合わずに外出準備が整わない場合もあります。

少なくとも予定の数日前までには必ず伝えるようにしましょう。

外出中の食事提供をストップする関係から、所定の様式に記入を求められる場合があります。

また、外出届のような書類の提出も必要となる場合があります。

施設によって必要な手続きが違います。施設によっては普段の生活プログラムの関係で外出可能な時間が定められている可能性もあるので、併せて確認しましょう。

外出日時が入浴日に当たっている場合は、振り替えてもらえる所とやそのまま次回まで入浴できない所があります。

そのあたりの対応についても施設に確認したうえで、もし振り替えが困難であり、本人も納得できないようなときは入浴日以外に外出日を設定するとよいでしょう。

たかが外出と本人や家族は思うかもしれませんが、普段見えない部分で施設スタッフが様々な生活上の配慮をしていることも多いです。

例えば食事の際に使用している自助具や薬の準備・食事摂取の際に必要な配慮(誤嚥予防のための食形態変更やトロミを付けられるかどうか)・普段の生活環境と違う所で過ごすことによる認知症状の一時的な変化などにより、相当の準備時間を要したり、やむを得ず本人の体調を考慮して外出を控えるように打診される場合もあります。

外泊する際の手続き

基本的には外出時の手続きと同様ですが、それに加えて外泊申請の書類を記入するよう求められる場合があります。

複数日に渡って施設を離れることになりますので、より細かなリスク管理や危険予測、外泊中の緊急時対応について確認・事前調整が必要となります。

基本的には外泊中は介護報酬が発生しませんので、普段は施設負担であるオムツ類についても自身で用意するよう求められることがあるかもしれません。

施設に確認しましょう。

また、平成30年度の介護報酬改定により、外泊時在宅サービス利用という仕組みができました。

詳細は後述しますが、これを利用する場合は必要な手続きや相談・調整が別途必要となります。

外出・外泊の介助は誰がする?

施設行事による外出・外泊の際は入所している施設の介護員が付き添います。

そのため介護は介護員が実施します。

また、介護に必要な物品やオムツ類などの消耗品も介護員が持参します。

ただし、施設行事による外泊は極めて稀です。

入所者個人による外出・外泊の際は、家族対応となります。

施設職員が行うことは、外出の準備や送り出しの際に家族が用意する車輛への乗車介助程度です。

施設が保有している福祉車両を借りて外出することはできませんので、常時車椅子等で福祉車両が必要な場合は家族側で手配することになります。

在宅介護では、介護保険適応の「通院等乗降介助」といったサービスがあります。

また、任意のサービスになりますが地域によっては「福祉有償運送」という在宅で通院や外出等に乗降介助を必要とする方に対するサービスを提供しているところがありますが、どちらも在宅の方を対象としたサービスです。

仮に自宅に一時帰宅するという場合でも、利用できないケースが殆どです。

そのため、福祉車輛による乗降介助を必要とする際は、介護保険適応外の介護タクシーを手配することとなります。

ただ、この介護タクシーについても事前の予約が必要で、突然の利用は空きがなく利用できない場合が多いです。

なるべく早く予約する必要があるでしょう。

外泊時在宅サービスについて

施設によっては対応していない場合がありますが、外泊の際に自宅で施設職員もしくは入居する施設が別に外部委託する事業者によって介護を受けることができる“外泊時在宅サービスの利用”という名称のサービスがあります。

平成30年の介護保険改正時に新設されたサービスです。

外泊当日及び最終日は通常の施設介護サービス費が算定されますが、その間の日に下記要件のもとで自宅に外泊した場合に利用することができる加算です。

詳細は、対応している施設に問い合わせて確認しましょう。

病状および身体の状況に照らし、医師、看護・介護職員、支援相談員、ケアマネジャー等により、居宅 において在宅サービス利用を行う必要性があるかどうか検討する。

当該入所者または家族に対し、加算の趣旨を十分説明し、同意を得た上で実施する。

介護老人福祉施設のケアマネジャーが、外泊時利用サービスに係る在宅サービスの計画を作成するとと もに、従業者または居宅サービス事業者等との連絡調整を行い、その利用者が可能な限りその居宅にお いて、その有する能力に応じ、自立した日常生活を営むことができるように配慮した計画を作成する。

家族等に対し次の指導を事前に行うことが望ましい

(イ)食事、入浴、健康管理等在宅療養に関する指導
(ロ)運動機能および日常生活動作能力の維持および向上を目的として行う体位変換、起座または離床訓練、起立訓練、食事訓練、排泄訓練の指導
(ハ)家屋の改善の指導
(ニ)介助方法の指導

利用者の外泊期間中は、当該利用者の同意があれば、そのベッドを短期入所生活介護に活用することは可能である。

この場合、外泊時在宅サービス利用の費用を併せて算定することはできない。

介護タクシーの利用方法

介護タクシーの利用方法

それでは、実際に入所者が外出・外泊する際に実質的な移動手段となる介護タクシーの利用方法について解説しておきます。

施設入所している状態のため、介護保険法対応の介護タクシーは利用できません。

あくまで介護保険対象外の介護タクシーを利用することになるので、予約する際はその点を確認することを忘れないでください。

介護タクシーの対象者

介護保険対象外のサービスとはいえ、要支援や要介護の認定がついている方を対象にしています。

今回の記事は特別養護老人ホームに入所している方の外出・外泊に関する内容ですので、この記事を読んでいる皆様の場合は例外なく当てはまると考えて頂いて良いでしょう。

介護保険外のサービスですので、ケアマネジャーに連絡したり、ケアプランを作成する必要はありません。

また、利用目的に制約がないので、基本的にはどのような目的であっても利用することが可能です。

サービス内容と注意点

基本的には、福祉車両で提供されるタクシーと考えて下さい。車椅子対応の車輛を用い、リフト操作を中心とした乗降介助を行います。

ただし、介護関連の資格を持っていない乗務員が当たる場合もありますので、要望に応えられるかは事前に確認が必要です。

運賃

福祉車両で提供されるタクシー業という観点から、通常のタクシーと同様のメーター料金で徴収する場合が多いようです。

ただし、事業者によっては別の料金体系を設けているタクシー会社もあります。

  • 例1 時間制運賃
  • 30分毎1,000円、または30分500円+以降30分毎に2,000円など

  • 例2 距離制運賃
  • 2キロ750円+1キロ毎300円(迎車含む)など

    福祉車両を使用するということもあり、介護保険対応の介護タクシーの場合はメーター料金が通常より安いケースも多いですが、この場合は介護保険適応外の運賃になるので、通常のタクシーより料金が安いということはないでしょう。

同程度かそれよりも高い金額設定である場合が殆どです。

外出・外泊中の利用料金について

外出・外泊中の利用料金について

外泊時在宅サービスの加算を利用する場合は、1日あたり560円(介護保険自己負担割合が1割の場合)の追加費用が発生します。

また、実際には施設に居なくても、その居室を確保しているという観点から部屋代は発生します。食費は発生しません。

入居者の外泊中の空きベッドを短期入所に活用することについて同意しており、実際に実施された場合は部屋代は徴収できないことになっているため、この場合は計算されません。

外泊中の空きベッド利用について同意しておらず、外泊時在宅サービスも利用しない場合は、「外泊時費用」として1日当たり246円(介護保険自己負担割合が1割の場合)が算定されます。

これは、外泊中で空床となった状態でも当該ベッドを確保しておくという観点から発生する費用になります。

まとめ

まとめ

このように、特別養護老人ホームでは、入所者個人の希望により外出・外泊は基本的にいつでも可能です。

ただし、その場合に追加の料金が発生する場合があります。

また、施設外に出た際に必要な介護は基本的に家族が対応することになります。

移動に使用する車は家族の自家用車を使用するか、介護保険外の介護タクシーを利用します。

普段設備の整った老人ホームで介護を受けている方が外出したり外出先で宿泊するということになると、用意周到な準備や危険予測などが必要になります。

行き当たりばったりの計画では、実行した際にトラブルに直面することも多いでしょう。

また、環境が変わることにより一時的に入所者の認知症が増悪し、思いがけない行動をとることもあります。

事前に施設の相談員や介護支援専門員、介護職員と相談し綿密に計画を練って準備をすることが必要不可欠ですね。

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