特別養護老人ホーム

特別養護老人ホームの歴史にクローズアップ!昔の名前は養老院?

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特別養護老人ホームの歴史にクローズアップ!昔の名前は養老院?

今や介護のための施設と言えばまず殆どの方が挙げる特別養護老人ホーム。私が勤務している社会福祉法人は、今年創立90周年。

それに対して介護保険制度が始まったのは西暦2000年です。

ならば、一体この特別養護老人ホームはいつ頃からある施設なのでしょうか?

今回は、そんな特別養護老人ホームの歴史にまつわる疑問について紐解いていきます。

特別養護老人ホームの誕生について

特別養護老人ホームの誕生について

そもそも特別養護老人ホームとは、現在は介護保険法上の施設サービスとして定義されています。

立案された施設サービス計画に基づいて、入浴・排泄・食事などの日常的な介護及び日常生活上必要な世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話を行うことを主な目的としている施設です。

特別養護老人ホームを語るうえで、カギとなるのは、やはり西暦2000年の介護保険制度の開始です。

まずは介護保険制度が始まるまでの歴史についてご紹介していきましょう。

元々は養老院と呼んでいた!?

特別養護老人ホームの前身は、「養老院」と呼ばれる施設です。

初めて養老院と名乗ったのは、1895年に東京に設立された「聖ヒルダ養老院」であると言われています。

養老院とは宗教家や篤志家や慈善団体などが救済事業の一環として実施した施設です。

身寄りのない高齢者や様々な事情により自宅で生活することができない高齢者、貧困により在宅生活ができない高齢者等を保護していました。

つまり、金銭面や介護を受けて自宅で生活することが困難になった人が慈善事業で設置された施設に入る、というイメージでした。

養老院は生活困窮者を収容する施設とも言えます。

そのため当時は養老院という言葉自体によくないイメージを持っている方が少なくないため、「養老院に入る…」「養老院に入れられる」というような状態で使われることが多かったようです。

そのイメージが根強いために親を老人ホームに入れるのは親不孝者であり、老人ホームは姥捨て山と同じだと思われていた方々も多かったと考えられます。

老人福祉法と特別養護老人ホームの関係

それまでは慈善事業として行われてきた養老院が施設として公的に位置づけられたのは、1929年の救護法改正の時でした。

「救護施設」として制度化されています。

その後、1950年の生活保護法制定に伴い「養老施設」として位置づけられました。

さらに1963年に施行された老人福祉法によって、「老人ホーム」と名付けられたのです。

その流れの中で常時介護を要する高齢者の処遇が課題となり、「養護老人ホーム」「特別養護老人ホーム」「軽費老人ホーム」と枝分かれした形になります。

その中でも特別養護老人ホームは、「身体上又は精神上著しい欠陥があるために常時介護を必要とし、しかも居宅では介護を受けることが困難※」とされる人が入居する施設として創設されたものです。

※現状では相応しくない表現ですが、旧厚生省「厚生白書(昭和38年度版)」第10老人の福祉 にてこのように定義されているためそのまま表記しました。

日本で最初の特別養護老人ホームとは?

社会福祉法人十字の園が現在も運営している「浜松十字の園」が日本で最初の特別養護老人ホームと言われています。

生活保護法に基づく保護施設である「十字の園老人ホーム」が日本初の介護老人ホームとして開設され、その後1964年に「特別養護老人ホーム」としての認可を受けたのです。

現在でも、同様の名称で運営されています。

介護保険制度がスタートしてからの特別養護老人ホーム

介護保険制度がスタートしてからの特別養護老人ホーム
介護に関する大幅な変更が行われたのが、2000年の介護保険法施行です。

これに伴い、介護行政は大転換を迎えることとなります。

介護保険制度上での名称

養老院から始まって、管轄する法律の改正や変更によってその名称を変えてきましたが、介護保険制度開始後も引き続き「特別養護老人ホーム」の名称を使用しています。

介護保険制度は在宅生活を支えるサービスある「居宅サービス」と、各種目的の違う施設に入所する「施設サービス」の2分類から始まりました。

その中で特別養護老人ホームは「施設サービス」に分類されています。

元々同じ派生元から生まれた「養護老人ホーム」や「軽費老人ホーム」は、常時介護を必要としない方も対象にしている施設であるという考え方から、介護保険法上の施設としては位置づけられませんでした。

常時介護を必要とする方の入所先としてこの2つが候補に挙がらないのは、こうした歴史的背景があるからです。

措置から契約へ

介護保険制度導入前は地方自治体が老人福祉法に基づく措置制度によって入所希望者を独自に必要性について判定し、各施設に振り分けて入所させていました。

しかし、介護保険制度が始まると、契約方式に変わったのです。

全国統一的な基準の元で地方自治体が主体となって要介護認定を行い、それを受けた入所希望者が特別養護老人ホームと入所契約を結ぶ形に変更になりました。

これには、措置制度の弊害を解消するためという背景がありました。

説明した通り、措置制度は市町村が利用者を施設に振り分けるため、施設側は「あぐらをかいていてもお客さんが寄ってくる」と言っても過言ではない状態でした。

もちろん全ての施設がそうではありませんが、殿様商売のような側面があり、そのため介護の質が担保されるとは言い難い状態であり、虐待なども多かったと言います。

利用者目線からも大きな問題点がありました。アパートやマンションは、どこに住むか自分で選ぶ(契約する)のに、介護が必要なったときは新たな生活の場である施設を選ぶことが出来ずに行き先を指示されるのです(措置制度)。

そのため介護業界にも市場原理を植え付け、事業者間競争をすることによってそれぞれの施設のサービスの質を向上させる…それが契約制度導入の目的の一つだったのです。

大規模な特別養護老人ホームの中でも個別ケアを実現する上での一つの形、ユニットケア。これも契約制度が始まったことによって、よりよい介護を目指す考え方から生まれたものなのです。

地域密着型特養の誕生

現在は、通常の特別養護老人ホームだけでなく、小規模な施設である地域密着型特別養護老人ホーム(通称ミニ特養)も生まれています。

これは通常の大規模な特別養護老人ホームとは違い、定員29人以下で所在する市町村に居住する方のみを対象とした小さい特別養護老人ホームです。

規模が小さいため、家庭的な雰囲気で住み慣れた地域での生活や人間関係を入所後も継続できることが大きなメリットです。また、管轄が県ではなく市町村になるため、その地域事情に沿った指導監督下に置かれている点も特徴です。

まとめ

まとめ

「特別養護老人ホーム」は、かつては慈善事業として始まった「養老院」でした。姥捨て山に行くという負のイメージであった介護施設も、現在は介護保険制度の改正を重ね、施設側も自己研鑽を重ねることによって「選ばれる施設」を目指す状況になってきています。

その一方で地域による差が大きく、何百人単位の入所待機者がいる施設もあれば、空床を抱えて困っているホームもあります。介護人材の不足により、人員配置基準を満たすことが出来ずにやむを得ず受入人数を絞っている施設も少なくないと聞きます。

今後は団塊の世代が75歳以上となり要介護者が急増すると考えられている“2025年問題”や、超高齢社会を超えて“人口減少社会”に突入し介護の受け皿そのものについても心配な状況となっています。更には、社会保障費は年々右肩上がりとなり、その費用抑制のため実質的な“ハシゴ外し”茂危惧される世の中となってきています。

介護職員の待遇改善はもちろんですが、それだけではなく業界全体の賃金や労働環境の改善が求められています。

令和の時代に入り、これからは過去にとらわれない新たな介護施設の形を模索していく段階に来ていると言えるでしょう。

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